1
2
事業主や家族従事者、雇用している作業者が作業中に事故にあえば、経営に深刻なダメージを与えます。死亡や重傷事故が発生すれば、場合によっては、廃業せざるを得ない事態になりかねません。
農作業事故の発生を防ぐためには、営農上に潜む危害要因(危険な場所・作業・もの・状態)や、危害の程度を把握し、それを踏まえた改善策を講じることが重要です。日頃から作業手順、作業環境等についてチェックを行い、作業方法の見直しや危険箇所の明示または改善を行っていく必要があります。
農場に被雇用者がいる場合、使用者(事業主=農場経営者)には「労働安全衛生法」により労働者に対して労働災害を防止する義務があります。「労働安全衛生法」は被雇用者のいない家族経営には適用されませんが、被雇用者のいる農場同様に自身、家族の安全を守るための活動を行うことが、農場を継続するために必要です。
具体的な取組の流れは下記のようになります。
またリスクを低減するための対策は、以下の3つを念頭に組み合せて立てます。
農作業事故の減少に向けて、農作業安全のリスク管理に取り組むことが求められます。
<具体的な取組事例>
危険な作業の例
作業ごとに、どのような事故が、どの程度の頻度で発生するか検討し、事故を起こさないための作業手順のルール化、事故が起こっても被害を軽くするための装備等を整える。
高さ制限を設定すべき事例
農産物の保管方法、保管の状態によっても、労働 安全上のリスクは高まる。資材等を積み上げる際には、高さ制限を設ける等して、安全に作業できる環境を整える。
電気柵の注意喚起
ひとつのリスクを下げるための活動(害獣の侵入防止)は、他のリスクを高める(感電等の労働安全上のリスク)こともある。農場内で新たな設備を設ける、機械を導入する等を行ったら、必ずリスクを再評価し、高まったリスクを低減するための対策を講じる。
ケーススタディ
No. | 具体例 | 想定される対策 |
1 | トラクター等を傾斜地や段差のある危険な場所で使用し、転倒事故が発生 |
|
2 | 耕運機の操作ミスによる挟み込まれ事故が発生 |
|
3 | ほ場での一人作業の際に事故があり、発見が遅れ重傷化 |
|
4 | 高温時に連続して作業を続けたため、熱中症が発生 |
|
5 | 風邪等での薬の服用によって眠気を催した作業者が機械操作でミスし、事故が発生 |
|
6 | 長時間作業により体力・集中力が低下し操作ミスにより事故が発生 |
|
7 | 農産物や廃棄物の運搬時に、積載可能重量を超過した状態で公道を走行し、交通事故が発生 |
|
3
作業に適した服装や保護具の適切な着用は、作業事故から従事者の身を守るために不可欠です。農作業時に適切な保護具・服装を着用していないと、作業事故の原因となることや、ケガや障害の程度を悪化させることがあります。また、適切な保護具・服装であっても、正しく装着しないと機能が発揮されません。袖口をしっかり締める、ヘルメットのあごひもを締めるなど、適切に装着しましょう。
使用する機械の説明書には、必要な保護装備が記載されていますので、これらを確認し、事故の発生を防ぎ、事故が発生した場合でも被害を小さくできるようにします。
作業内容や作業環境に応じ、安全に配慮した服装や保護具等の着用をルール化し、すべての従事者が正しく着用または装着する必要があります。加えて、保護具は、その機能が維持されているか、使用前後の点検、日常の保守管理も実施する必要があります。
<具体的な取組事例>
「労働安全衛生法」では、作業者の安全、健康を守るため、事業者が遵守すべき事項を定めています。これらも参考に、自らの農場の取組を整備します。
適切な装備の準備
危険な作業に従事する場合は、相応しい装備を整える。保護装備にも、その能力を保証できる期限があるので、確認する。
農場における周知
防護装備を徹底するため、必要な場所に掲示等で周知する。
刈払機使用時の服装及び保護具の例
(出典:(独)国民生活センター資料「刈払機(草刈機)の使い方に注意」)
ケーススタディ
No. | 具体例 | 想定される対策 |
1 | フォークリフト操作時にヘルメットを着用せず頭部のケガが発生 |
|
2 | 機械の操作時に袖口が巻き込まれケガが発生 |
|
3 | 傾斜地での刈払い作業時に、履物が不適切で転倒事故が発生 |
|
4 | 粉塵が発生する清掃作業に長期間従事し、粉塵アレルギーを発症 |
|
4
農業機械や器具等を誤った方法で使用すると作業事故を引き起こしかねません。機械等の操作に従事する際には、取扱説明書の確認等を通じて、当該機械等の危険性や適正な使用方法を理解することが重要です。
取扱説明書等により農業機械等の適正な使用方法や注意・禁止事項を確認・整理するとともに、こうした情報を販売店等から積極的に入手し、農業機械等を使用する可能性のある従事者全員に周知します。
特に、農業機械等を初めて使用する時や更新する際に事故が発生しやすいことから、適正な使用方法等を必ず確認し、従事者への周知を徹底する必要があります。
<具体的な取組事例>
【農業機械の適切な使用例(乗用型トラクターの場合)】
乗用型トラクターを操作する際は、以下に注意し、安全に操作しましょう。
乗用型トラクターの安全域
トラクター死亡事故の最大要因である転落・転倒の際、乗員を守るための安全キャブ・フレームは、シートベルトを装着してはじめて十分な効果を発揮する。
乗用型トラクターの片ブレーキ
路上での移動の際、左右ブレーキの連結を忘れると、ブレーキの片効きによる急旋回が発生する可能性がある。
ケーススタディ
No. | 具体例 | 想定される対策 |
1 | 道路走行等、乗用型トラクター移動時に左右ブレーキを連結せず、片ブレーキによる急旋回が転落事故を誘発 |
|
2 | 点検しやすいようカバーを外して機械を稼働したことにより、巻き込み事故が発生 |
|
3 | 狭小区間に侵入するためにトラクターの安全フレームを取り外し、この状態で転落したことで車両の下敷きになる事故が発生 |
|
あなたの理解度は?
理解度テストでチェック!
今まで学んできたことをみどりのチェックシート理解度テストでチェックしてみましょう。
テストの問題は環境保全12問・農作業安全4問の全16問。すべて正解すると修了証が発行されます!